Title : Yo!
Artist : Silvana Deluigi
No : EWAC-1025
Price : ¥2400(税込み)
Release : 2002/6/21
タンゲーロという映画で欧州を中心に人気を集める女優で歌手のシルヴァーナ・デルイージ。タンゴに秘められたあらゆるドラマを表現する声を身体をもつ存在としてキップが長年注目してきたアーティスト。ピアソラキンテートのメンバーをベースに、スティーブ・スワローなども参加。名曲「ラクンパルシータ、を斬新なアレンジで取り上げ、エデゥ・ロボの名曲『マリア・マリア』も収録。
「これは本当に優れて美しく作られたアルバムだ」-小西康陽(ライナーノーツより)
『シルヴァーナ・デルィージの、アメリカン・クラーヴェでのデビュー・アルバムのタイトルは“Yo!”すなわち“わたし!”ーーでも、その「わたし」はどこにいるのか? 本人が「わたし!」と言っているのだから、ここには彼女がいるはずだが、その姿はいくつも重なって見えてきて、イメージは決して鮮明ではない。 彼女自身が「これらは、みなさんおなじみの曲かもしれないけれど、わたしには個人的なもの」というようなことを書いている。彼女の歌いぶりも声も、曲へのアプローチもたしかに個性的である。でも、個性的でありながら、その裏側には、それぞれの曲の初演者あるいは作者たちの肉声が、時間と空間を超えて濃密に重なっている。曲によって、同じシルヴァーナの声が、まるで別人のひびきをもって聞こえる。
これはたしかに魔術だ。
いくつかの新曲をのぞいて、すべて彼女の少女時代、あるいは思春期に耳にして、肌にしみこんでしまった歌がここにある。これらの曲を受け取った彼女のアンテナは、精密な感度をもって、そしてあくまでも「わたし」の感受性に導かれて、あらゆる方向に向いていたのだろう。
1920ー30年代のタンゴ史上最高の歌い手カルロス・ガルデルのレパートリーがある。「歩く大地」と呼ばれたアルゼンチンの民族芸術家アタウアルパ・ユパンキの曲もある。ボサノヴァにつづく時代を代表するブラジルのシンガー・ソングライターの作品がある。メキシコのロマンティック歌謡の巨匠アルマンド・マンサネーロの歌がある。そして文学的なタンゴ……。
ラテンアメリカの文化そして人間性のいちばん美しいものは、その歌・音楽に昇華されていると、わたしはいつも思っている。彼女は曲それぞれの文化を、そのままの体臭や色彩を保って、しかし「わたし」のものとして表現する。
いちばん、わたしの印象に残ったのは、シルヴァーナが裸の声で、伴奏なしで歌うこんな歌詞だ。
「1時にわたしは生まれ
2時にわたしは大きくなった
3時にわたしは愛人をもち
4時にわたしは結婚した」
はるか昔のノスタルジーが薫るセファルディー(15世紀末にスペインから追放されたユダヤ人の子孫)の民謡。これが彼女の子守歌だったのだろうか?
このアルバムには、なん人もの「わたし」がいる。さまざまの時代の、さまざまな方向を向いた「わたし」がいる。でも、そのすべてが、いまのシルヴァーナとして生き、歌っている。
シルヴァーナ・デルィージの歌を定義したり、分類したりすることはできない。でも、さっき「イメージは鮮明でない」と書いたけれど、その重なり合ったイメージの底に、深く、重く、たしかにひとつの、形のない形がある。
このアルバムの編曲・演奏は、感覚も技術もこまやかで濃密なものだ。そこにはすばらしい音楽家たちが参加している。わたしの大好きな、最高のタンゴ男たちもいる。今は亡き巨匠アストル・ピアソラの空気をいっぱい吸いこんできた彼らもやはり巨匠だ。でも、彼らが演奏している部分にまで、声の聞こえないシルヴァーナの存在が浮かび上がっている。この豊かな音楽空間をつねに支配しているのは、決して大声を出さず、ひっそりと、しかし熱く、さまざまな物語をうたう「わたし」なのだ。
シルヴァーナ・デルィージの歌を「説得力がある」と評することは、たぶんまちがいなのだろう。彼女は、そのするどい感性で受けとめ体のなかに吸収したものを、そのまま、こんどは外へ向かって表現しているだけなのだ。聴くものを説得する必要はない。
シルヴァーナの魔法にかけられたら、私たちはその声から、いや時には声もいらない、その「わたし」から逃げられない。この魔法にかけられた者はしあわせだ。』
高場 将美
Musician & Personnel
Silvana Deluigi:voice
Pablo Ziegler:piano
gustavo beytelmann:piano
osvaldo calo:piano
Fernando Saures Paz:violin
Alfredo Triff:violin
Renaud Garcia Fons:guitar
Horacio Hurtado:guitar
Andy Gonzalez:guitar
robby ameen:percussion
walter castro:bandmeon
horacio romeo:bandmeon
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