Title : jazzic anomaly
Artist : 藤原大輔
No : ewbe-0009
Price : ¥2600(税込み)
Release : 2004/7/10
エレクトロニクスに見出したジャズの新たなる可能性
打ち込みのグルーヴに絡む生楽器がダイナミックにジャズを奏でる。よりクールに、よりフィジカルに。
藤原大輔が産み落としたジャズの突然変異。
いきなりこういうのはイエローカードかな。
最初にPhatを見たとき、こりゃカッコイイと思ったの。それ、見た目だよ。まん中で構えるサックス吹き、スラッとして最近でいうイケメンなんだけど、いっぽうでは日本の戦後史の中で変質する以前の“硬派さ”も共有していたりする。こんな存在感にずいぶん目を奪われつつ、よく見れば残りのふたりも眼光に“武士”のような鋭さがあって、時代とのギャップが生む玄妙な魅力が漲っていたよね。
よく思うけど、最近のジャズはすっかり色気がなくなった。じゃあ昔あったかといえば、すごいじゃない。今じゃベルトの穴、5つぐらい増やしてる父親世代もが。5・60年代の日本のジャズのレコードとか趣味で買ったりしてるけど、もう音を聴く前からカッコイイ。ジャケット一面に自分を露出させて。その出で立ちもかなりイカしてる。銀座あたりの高級テーラーで仕立てたような背広を着て、涼しげな顔で楽器を手にしてるの。ブルーノートやリヴァーサイドなんかのアートディレクションをモチーフにしてたんだろうな。まぁ、同時代でいえば、アチラさんのカッコ良さにはアタマが上がらないだろうけど。自分のアルバムに“The Gigolo”なんてつけるラッパ吹き、ヤバすぎるじゃない。
でもね、Phatがそれをやったところで、なんの違和感もなかったはず。たぶん。
肝要なのは音、それはわかってます。デビュー・アルバム『色』をパッと聴いて一発で気に入ったから。ただ、Phatの魅力って、もう言い尽くされてる。“日本が誇るジャム・バンド”だとか、“クラブとの掛け橋を担う新たなジャズ”だとか。確かにそれはそうなんだけど、オレ的には“趣味”の世界にいきなり肉体ごと持っていかれたときの衝撃を、こうやって何年も持続させているにすぎなかったりする。ずばり“好み”なんですよ。毎度違うことをやってるからスタイルと呼べるようなスタイルはないだろうけど、その異なるアプローチを見せられるたびに、“コレもいい、アレもいい”と、視線の定まりが悪くなる。ソロ第1弾、そう“藤原大輔”となった『白と黒にある4つの色』では、これまでのトライアングルがいっきに崩壊したことから、音のベクトルが内向かつ内省的になった。3人のときは、70年代パンクにも似た、パワーだけが原動力となっていたような運動も見せつけてくれて刺激的だったけど。
それでも、一貫して音の周波がオレの耳を揺さぶってきた。おそらく音の質感や着地点などが、スタイルや楽器編成といった皮相的な事実とは切り離されたところに普遍性を生み出していたんだと思う。こういうのって、そう簡単にはアーティストとして変わらないもの。オレもこの先、彼に対しての見方、変わることはないだろうな。
だから、この新作『Jazzic Anomaly』がリリースされると聞き、すぐに思いましたよ、“まちがいなく好きな音だ”と。
もちろん、これまでにはない新しい藤原にも出会えた。たとえば、“静と動”の入れ子構造で藤原ワールドが創出されているところ。とくに“動”のほうにPhat以降の更新されたアプローチがあると自分では見ていて、それは昨今、テクノ方面(ジェフ・ミルズ、リーバステープ)とのお近づきを図る藤原の、積極性の表れだと思うな。
ただ、そういう理念や知念だけで推し量れるところに藤原の魅力があると思ってると、裏切られたりもするの。あまり多くを語られない彼の隠された魅力って、経年を重ね磨きに磨きあげられたブルースのような、まろやかな温かみが音に秘められていたりするから。これ、カラダのまん中から下で感じ取るものじゃん。
だから、理屈を捨てることを躊躇し、藤原の音楽と対峙してもあんまり意味ない。“カッコイイ”だけで藤原を聴く、楽しむ。こういうのが大事、そういう時期に入ってると、今強く感じる。“これ、イケテない?”と、語尾上げでいくジャズなんだ。(text by 若杉実) →藤原大輔インタビューはこちら
Musician & Personnel
fujiwara,daisuke:sax, electronics
miyamoto, takana:p, keys
toriyama, takeaki:ds, perc
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