“New”に込めた冒険心が満載の第三弾!

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text by末次安里(JazzToday編集長)

 カメルーン出身のリチャード・ボナ(b)と、キューバ出身のオラシオ“エル・ネグロ”エルナンデス(ds)、そして自らは日本人である渡辺香津美(g)がなぜ、この非・米国人から成るトリオの名称にKAZUMI WATANABE New Electric Trioとわざわざ“New”の3文字を入れたのか。じつは一度も本人に質したことはないのだが、そこに込めた想いを推理してみたい。ご存知のとおり、現在の渡辺香津美はGuiter Renaissanceというアコースティック・サウンドの連作と、このMo’Bopというエレクトリック・トリオの連作を交互に制作・発表し、50歳を過ぎて益々血気盛んな創作意欲を見せている。

また、筆者は両新作が完成する度、本人から制作秘話を伺うという機会に恵まれてきたが、「Guiter Renaissanceを創ったことで逆に“エレクトリック・ギターでやらなければいけないこと”が少しくっきりした」との香津美談を聞くまでもなく、両連作の相乗効果は毎回如実に感じ取れ、いわゆるアコギ編とエレキ編のリバーシブル性が独自のスリリングさと思わぬ作品的広がり、あるいは化学反応を催していることは望外の成果であろう。

しかも(ここが肝心なのだが)前述の如く、この両輪というか4WD的旺盛さで連発中の二つのシリーズは渡辺香津美が40代最後の季節に企画され、来るべき50代に向けて口火が切られたという点がなんとも興味ぶかい。夏に『Mo’Bop』第一弾を発表し、直後に50歳を迎えた2003年秋のライヴイベント(JazzToday @STB139)で、彼が宣言したことを筆者はいまだ鮮明に憶えている。「こうなりゃ100年ギターで1世紀! 100歳になってもうるさいギター弾いてるジジイをめざします(笑)」。その夜はKAZUMI WATANABE New Electric Nightと称し、多忙で来日不可能なボナの代打で“オラシオの弟ぶん”カルロス・デル・プエルトが若々しい低音を響かせたが、その暫定トリオの名称も「渡辺香津美New Electric Trio」と名前を漢字表記に代えただけで“New”の3文字を冠していた。

要は誰よりも渡辺自身が“新生”を意識し、毎作の“冒険心”を忘れず、ココロの“若さ”を心がけている証しなのではなかろうか。青年期の師匠、中牟礼貞則(g)と念願の共演が実現した『Guiter RenaissanceIII』の取材で彼がこう語っていたのが印象的だった。「先生は74歳になられるのに演奏のほうはとてもタイトで素晴らしくて。実年齢はともかく“音は齢をとらないんだな”というのをまざまざと感じて清清しい気持ちになりました。やはり一番学ぶのは現役で演奏なさっている姿を観るコトだと思うんですよね」。そして今回発売される『Mo’Bop㈽』では、自らの変わらぬ青春性が炸裂。ヨーヨー・マからジョン・ゾーンまで幅広くコラボしているブラジル出身の鬼才、シロ・バプティスタ(perc)をゲストに迎えて“New”の要素を加味した彼のトリオの第三弾。カバー対象もカーラ・ブレイからオリバー・ネルソンまでと想定外の面白さが満載されてGuiter Renaissanceと自ら拮抗させている意欲作だ。渡辺香津美、一歳下の筆者にいつも元気をくれる人である。
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EWSA 0125 ¥3,000(税込)
2006.9.6 release
CD/SACD ハイブリッド盤(ステレオ音声のみを収録)DSD Mastering

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