「これまで」と「これから」が同時鑑賞できる幾夜。

ewe_mag_main.jpg

text by 末次安里(JazzToday編集長)

一冊目を書き終えたら妙に筆が乗ってしまい、難なく「続」編が仕上がり、次いで「続々」が上梓され、さらに「新・○○」やら「帰ってきた○○」なるコトバが冠されて気づけば、続刊が待たれる人気シリーズに成長していたなんていう小説や随筆が“稀”にある。稀であるのは、それが最初から計って生まれた人気ではないからだろう。当初は銀座のソミドホールを舞台にスタートしたこの『JazzToday』というライヴイベントもどこか、そんなシリーズ本の流れに似ているような気がしてならない。銀座時代は「mood swing」などのキーワードも付いていたが、いつの間にかシンプルな年号読みだけに統一されてしまうという結構アバウトな面もあるのだが(笑)、イベント名の西暦が加算されてゆくのはとりもなおさず「持続力」を意味しているわけでそれが何よりも喜ばしい。

また、舞台を六本木(@STB139)に移しての2003年以降をふり返ってみても「短いようで長い」一年の変容が読み取れるから面白い。菊地成孔を例にとっても、銀座時代は東京ザヴィヌルバッハとして登場し、@STBの初年度は現在のquintet live dubの原型ユニット(ドラムは芳垣安洋)をお披露目。『デギュスタシオン・ア・ジャズ』を発表した翌年は、quintet live dub with stringsという豪華な編成で初日を飾り、翌日はTZB+オラシオ“エル・ネグロ”エルナンデスで「別の顔」を見せるなどの活躍ぶりを見せた。そして昨年からはPepe Tromento Azcararを組んで『南米のエリザベス・テイラー』+新曲でファンを魅了・拡大し、今夏はUAとのコラボ盤『cure jazz』で話題を独占してきた菊地がはたして今年は何を見せてくれるのか…大いに愉しみである。

というのも毎秋、このイベントを定点観測してきた立場だからこそ見えてきたことがあって、それは(アーティスト各人がどれほど意識しているかどうかは別問題として)とりわけ常連組に顕著な傾向として『JazzToday』での発言や演奏スタイルが“その後の彼(ないしは彼女)”を予見させるある種の節目、野心的な実験の場として機能している部分がかなりあるという事実だ。言い方を変えれば、毎年恒例のこの場は各参加アーティストのここ一年間の総集編が堪能でき、同時に今後の予告編的な愉しみがお土産でついてくるというお得感さえある。50歳を迎えた渡辺香津美が「こうなりゃ100年ギターで1世紀! 100歳になってもうるさいギター弾いてるジジイをめざします(笑)」とファン歓喜のコメントをしたのもこのステージ(2003年)だったし、Guitar Renaissance specialと題した昨年は1曲目の<アクロス・ザ・ユニバース>から熟成のアコースティック・サウンドで聴衆をたちまち鷲摑みにして魅せた。そんな玉手箱的催しで今年はいったい何が飛び出すのか。個人的には昨秋、仕事の都合で唯一見逃してしまった中島ノブユキのステージを観れるのが愉しみであり、かなり期待を寄せている。

→JAZZ TODAY 06ウェブサイトはこちら

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.ewe.co.jp/cgi-bin/blog/mt-tb.cgi/7176

コメントを投稿